2019年

2月
東京

 
 KJ氏にサンショウウオ観察の同行をお願いされていたので、サンショウウオ仲間の
ピッコロ氏とT森君にも声をかけて一緒にヒガシヒダ観察に繰り出した。
「フフッ私のフィールド力を見せつけてあげよう!」

12年ぶりに行く場所で記憶が定かでなくて、ちょっと迷ったけど成体を出すことができた。
ブルーに輝く卵嚢を是非見て欲しかったんだけど、2か所ともに見つけられなかったのが残念。
まだ♀のお腹に卵がある状況だった。

ナガレタゴも多産する場所なんだけど、チラホラ程度しか見当たらなかった。
フィールド屋でないKJ氏はカエルの捕獲がぎこちなくて新鮮だったな笑

トウキョウサンショウウオにはまだ早い時期だと思ったけど一応そちらも確認。
予想通りまだ産卵はしてなかった。
ザリガニが酷いので多少駆除する。

   
 ナガレタゴガエル  越冬幼生

3月
茨城

 
 トウキョウサンショウウオを探す。

卵嚢は結構見つかったけど、成体が全然出ない。
卵の発生状況から考えて待機♂がまだいると思うんだけどな。

旧カスミグループと比べると繁殖期は短いとは思う。
 
 水深は非常に浅く10cm程度。ほぼ丸出しで付着端はかろうじて落葉か付着してない。

5月

熊本

 
 久しぶりに長旅

まずは熊本でベッコウサンショウウオ調査に同行する。
私が以前観察していた生息地の案内も行う。

保護指定されてから個人で行く事はなくなったが、相変わらずベッコウは美しいのぉ。
中には殆ど黄班が出なくて地味なのも結構いるんだけどね。
 
 ベッコウサンショウウオ  コガタブチサンショウウオ

 
 幼生を観察する様子

この場所は成体が出るような場所ではないが複数の幼生が見られた。
この沢に合流する枝沢でも過去に現認している。
いくつかの枝沢の源頭部が繁殖場所なんだろうと思う。

 
 初日の調査が終わり、かつての私の定宿に久しぶりに泊る。
しかし経営者がお年で一人で切り盛りしているらしく閉館するらしい。残念!

夕食後、私はドイツ人を連れて近くの田んぼにイモリを見に行く。
相変わらずのイモリ濃度で何百匹いるのか?
水のある所、画像の状態が続く。ずっとイモリ、イモリ、イモリ〜!

ドイツ人は「Amazing!」を連発。
彼は自然教育員のような仕事をしているらしいが、ドイツではこれほど大量にイモリが見れることは
あまりないそうだ。
 
 サンショウウオが消えた沢  サンショウウオがいた沢
 私が案内した場所は、かつては多くのサンショウウオが棲む場所だった。

10数年ぶりに訪れて夢中で探したが、あれ?全然出てこない?
T君に言われてふと気が付いた。「あれ?なんか苔とか下草が全くない」
川底も砂礫のはずが泥をかぶっている。
最初分からなかったが、所々鹿の防御柵が設置されている。以前は無かった。

冷静に見渡すと下草が無くなって斜面の土がむき出しで沢に流入している。
「これ鹿の食害だ...」
結局この沢では最源流部の鹿柵で囲われた場所でしかサンショウウオは発見できなかった。
柵で囲われた部分は苔むしている。
こんなに鹿の食害でサンショウウオの生息に影響がでるんだなぁ....
フィールドでまた一つ勉強させてもらったが、何ともやるせない気持ちでいっぱい...。
増えすぎた鹿は駆除しないといけないのは痛感した。
だが誰がどうやって....?


佐賀・福岡

 
 2019年。中国地方から九州にかけて1種とされていたブチサンショウウオが3種に分類された。
中国地方に生息するチュウゴクブチサンショウウオ
九州北東部にチクシブチサンショウウオ
九州北西部にブチサンショウウオ

九州の個体群は背面に斑紋が入らないのは知っていたが、九州内でも2種に分かれる内容で
どの程度の違いがあるのか見てみたく、どちらも見に行ける距離にある佐賀県鳥栖に陣取る。
佐賀、福岡と色々と徘徊してはみたが、「沢に水がねぇ〜」「雨が土砂降りなのに水がねぇ〜」
「水は少しあるけど持ち上がる石がねぇ〜」で殆どの場所で惨敗。

福岡側でやっと一か所だけ成体が出てきてくれた。
場所的にチクシブチサンショウウオだ。

 
同じ沢で見つかったチクシブチサンショウウオ

九州西部のブチサンショウウオとの外見上の判別点として背面に細かい斑紋の有無が
一つの判別法らしいが、右の個体の背面は殆どが茄子色で判別が難しい。

大きさもブチ>チクシブチ>チュウゴクブチなのだが、この場所のチクシブチは
私が主に見てる島根産のチュウゴクブチのサイズより小さい。
あくまでも傾向でよほど典型的でないと外見上での種の判別は難しい。
(飼育下ではチュウゴクブチよりも大きくなった)

ブチサンショウウオが見れなかったので複合的に考えられなかったのと
見れたチクシブチの個体数が少ないので、いずれまた訪れる事にしよう。
東京からは遠いのだよ...。


 
 
 帰り際に小倉の「いのちのたび博物館」に立ち寄る。

2019年の夏に行われた爬虫両生類の特別展示に私も微力ながら協力させて頂いた。
その打ち合わせも兼ね、館内の案内もして頂く。
展示されていない骨格標本の保存の方法や標本を見せて頂き興味が尽きない。
通常展示されていない珍しい生体も色々とバックヤードに飼われている。

   今回の九州でちょっと気になったのがこの陸貝

オオクビキレガイというらしい。
外来種で北九州で発見され、現在複数の県で確認されているようだ。鳥栖駅前で大量に発見した。

農作物などへの被害報告は不明だけど
単為生殖するらしく、車に轢かれた同種の死骸に群がる様は見ていてちょっと戦慄を覚えた。ちょっと数が多すぎる。


10月
大阪

 
 マホロバサンショウウオ観察

ブチサンショウウオが3種に分類されたと上記に記したが、岐阜から九州、四国に分布とされていた
コガタブチサンショウウオも2019年、マホロバ、ツルギ、イヨシマ、コガタブチへと4種に分かれている。

同一種な訳はないとは思っていたが、私のような素人は外見の差や産卵習性、環境、性格、卵嚢などでしか判断する事ができない。ツルギは当然別種だろうと考えていたけど、イヨシマが意外だったな。四国ではツルギのような茶色い斑紋の個体群と比較的低山に棲む白い地衣状斑紋個体とで分かれるもんだと思ってた.。

岐阜と近畿の個体群では体色に違いがあるし、九州の南北でも体色や大きさに違いがあるので
この辺も別種かと思っていたがマホロバとコガタブチとしてまとめられている。
ブチサンショウウオからコガタブチが別れた時は、そりゃそうだろうと思ったけど分からんもんだ。

だいぶ昔に本種を見てはいるが場所を覚えておらず、G氏にお願いして案内して頂く。
東京から日帰りの強行軍だぁ〜。


シマヘビを捕獲するG氏
サンショウウオも次々と探し出す。
この年でこのレベルは私の若い時を大きく凌駕してる。
末恐ろしい人材だ。
 沢の水際の石をめくったらセミの幼虫が..
肉眼では分からなかったけど根が張ってるから、伝って来ちゃったのかな?すぐ水没して死んじゃうぞ?
   大阪府では割とレアなニホンヒキガエル。
種は違うけど東京人の私は家の庭で普通に見れるので、それほどの感動はないのだ。
   マホロバサンショウウオ幼体

12月
福井

 
 福井のアベサンショウウオ調査

O氏にお誘い頂いて越前のアベ調査に参加させてもらった。
丹後半島の非常に狭い分布域に生息し、種の保存法に初めて指定された有尾類だ。
現在は兵庫、福井、石川等、結構発見されていてよっぽど他のサンショウウオのほうが
分布が狭いじゃないか!という感じになっている。

丹後半島のアベは見た事があるんだけど、他の地域の個体群は初めてなので違いを確認したい。

   調査の様子

地元の方が中心となって卵嚢調査を手伝っている。
中々若手の方は関心が薄いようだ。
調査を一般募集すれば来る人もいると思うが
なにせ遠いし生息地を教える事になるので
良からぬ人もいるので怖いよね。

現在H先生がご勇退された後の後継者がいないようで心配ですね。



   卵嚢

結構普通に産み付けている。丹後の生息地では水が染み出る湧水の伏流トンネルの中に産んであったけどこの地域では他の止水性と変わらない感じ。


まぁ伏流の中や隠蔽されている産み方もあるんだろうけど、個体数が多いせいか目視で確認できる産み方してたな。


   雄の成体

一番の特徴とされるのは繁殖期の♂の尾が大きく側偏するという事。他の止水性種でもヤマトサンショウウオ等、アベに劣らず尾が大きく側偏するが、側偏部位や肉厚な感じがいかにもアべらしく格好良い。

 
 
 アベサンショウウオ繁殖池にいたイモリ

この場所ではアベ成体♂2、産みたて卵嚢3個程度しか確認できなかったが、通常は多くの卵嚢が確認できるという。

小さな池の中には多数のイモリが生息していた。
結構活発に動いていたので越冬個体かは不明。
 
 上記の多数のイモリで特筆すべきは小さい個体の含有率の高さだろう。
SVLが30〜35mmほどの亜成体と思われる個体が20%ほど水中生活をしている。
私の手が小さいので画像では大して小さく見えないかもしれないがかなり小さい。
生後2年半ぐらいの個体に見える。
関東ではこのサイズが入水しているのを見た事がない。

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